静岡の田舎で生まれた私は、幼少の頃から母が髪を切っていました。
それは「断髪」という言葉がぴったりで、仕上がりはいつも散々(笑)。「美容室に行きたいの!」とお願いしても街の美容室まで気軽な距離ではなかったこともあり、幼少期の私の希望は、なかなか思うように通りませんでした。他の子が可愛い髪型をしているのを横目に、私はいつも乱れた髪、メガネ…見た目にコンプレックスがあった私は、周りの子と自分を比べては溜め息ばかり。
そして見た目に自信がないこともあり、コミュニケーションがとれない内気な性格…そんな自分が嫌で嫌で仕方ありませんでした。
そんな私が初めて美容室に行ったのは、中学生の頃。
初めて入る美容院はとても良い匂いがして、店員さんはオシャレな人ばかり。施術が終わり鏡に写った自分の姿は、自分でも見とれてしまうくらい。思い切って眼鏡をコンタクトレンズにしたこともあって、みんなから「整形したの?」なんて言われるほど。まだ内気ではあったものの、外見的な自信が湧いたことで、私は美容のチカラを身をもって感じることになったのです。
そんな自分の変化に感動した私は「美容師」という存在に強く憧れ、やがて「美容師になること」が夢となりました。
高校生になった私は、文武両道を掲げる学校に内緒で、サロンでアルバイトをするようになりました。
アシスタントのアシスタントとして、憧れの美容室の仕事現場を体験できることに只々感動する毎日でした。
「私、美容師になります!」
迷わず担任に真っ直ぐ伝えた私の想い…しかし返ってきた言葉は。
「考え直したほうがいいんじゃない?この先の人生長いんだから。どうなるかわからないんだし、最低でも卒業経歴は持っていたほうがいい!」というものでした。
確かに進学校だったこともあり、周りは有名大学へ進学を決めている子達が多く、また、先生は考えが若い私を心配してくれたのだと思います。でも…
「私の気持ちはどうなるの?私の人生何だから、やりたいことをたりたい!絶対に美容師になってみせる!」
認められない悔しさすらもバネにして、私は親を説得し、一人上京することを決めました。
そして美容専門学校に進学した私は、とにかく必死に勉強し、技術を磨きました。そのかいあって卒業後の就職先は大物有名人が頻繁に通う有名店に決まりました。
「よし、ここからやっていくぞ!」
高まる不安の中で、私の心は確かに達成と次への期待で満ち溢れていました。
…しかし、その想いがたった一ヶ月で崩れ去っていくことになるとは…この時の私は微塵にも思っていませんでした。
掲載日:2016年12月02日(金)
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ヘアメイクアーティスト
竹本実加(たけもと みか)
ヘアメイクを主として美容全般で活動する竹本実加さん。幼い頃に抱いた「美容師になりたい」という夢。内気だった彼女が独立するほどの強さをもてるようになれたのは、自分にとっての理想像を見つける為の一歩踏み出す勇気だった。