四国の旅も無事に終わりすっかりヒッチハイクに魅了された僕は、今度はヒッチハイク日本一周の旅を実行に移すために休学をした。人と違った人生を歩み始めることは怖かったが、以前の嫌いな自分に戻る方がもっと嫌だった。本当に自分がやりたいこと、その気持ちに初めて素直になれた。
旅に出てから6日目、山梨県の石和から河口湖に続く道で、あるおじさんに拾ってもらった。
そのおじさんとはすぐに意気投合し、それから2日後にはなんと自宅に泊めてもらえることになった。毎日続く野宿の中で心身ともに疲れていた僕にはとても有り難いことだった。しかしその夜、ささいなことがキッカケで、僕はおじさんを怒らせてしまうことになる。おじさんは人が変わったように僕に怒り出した。僕はなぜこんな小さなことでここまで怒られなければならないんだろう。と不思議で仕方なかった。しかし、怒られた後おじさんは静かに僕に言った。/
「ごめんな。ここまでキツく叱ったのは、君にもっと成長してほしかったからなんだ。社会に出たらここまできちんと指摘してくれる場面には中々出会えないだろうから。」
僕はその時に、おじさんの愛と、そしてその愛に気が付くことができずにイラついてしまった自分自身の未熟さに涙が溢れた。
「これが人の優しさなんだ…」
それから僕は、自分の非を素直に受け入れることができる人になろうと決めた。
その後の旅も困難を極めた。
危ない目にも遭ったし、いくつもの出会いと別れがあった。しかしその中で経験した人の優しさ、厳しさ、愛。僕は自分自身が磨かれていく感覚を覚えた。そして189日をかけ、349台の車にヒッチハイクして日本一周をついに達成した。
車に乗せてくれる人、食べ物をくれる人、笑顔で頑張れと言ってくれる人、家に泊めてくれる人、お金をくれる人。ヒッチハイクを通して、僕は本当に沢山の人から無償の愛をもらった。
僕はどうにかしてこの恩を返せないかと思った。
「将来かならずビッグになって、恩返ししにきますから!」
出会う人出会う人に心の底から伝えたつもりだった。しかし、それを伝えた誰もが口をそろえていった言葉…
「今後もし君の目の前に困った人が現れたら、今度は君がその人を助けてあげて欲しい。それが恩返しになるんだよ。」
その言葉に僕は衝撃を受けた。そして同時に強く願った。
「恩を送れる(贈れる)人になりたい。」と…
旅を終えたあとに見える景色は変わっていた。僕は、もう次の目的地を見ていた。
自分の『人生』という名の旅の目的。人と人との間に生まれる縁。
たくさんの縁に恵まれる自分だからこそ、その縁を…今度は僕が繋いでいきたい。
それが僕にできる、唯一の恩返しだから。
これがヒッチハイクを通して気付いた、僕のKey Page…
掲載日:2017年02月17日(金)
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株式会社オンリーストーリー 取締役
しあわせの種まき夫婦
川角健太(かわすみ けんた)
株式会社オンリーストーリーの取締役を務める川角健太さん。ヒッチハイク日本一周で繋げられた人の縁。そこで気付いた人と人を繋ぐ「御縁の恩贈り」とは。