土田真生 Episode3:父のうつ病、自分を見つめ直し上京 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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2階から叫び声がする。ぼくは木刀を握りしめていた。額には汗が滲んで、心臓が高鳴る。
妹と弟は泣きわめいている。18歳のときから、こんな生活が続いている。

警察官だった父は、ぼくが高校を卒業した頃にうつ病になり、閉鎖病棟と家を行き来していた。自殺の名所に車で突っ込んだこともあり、そのときは、車内に酒の缶が大量に転がっていた。

その頃ぼくは、フリーターをしながらダンスを続けていた。周りにはダンサーだと名乗っていたが、実際には1日8時間はアルバイトをしていた。

そんなときに父のうつ病が発症した。手当が出ず、我が家は収入が途絶えた。

「このままフリーターをやってていいのか」

そんな思いがあった。父のうつ病の介護をしているうちに、ぼく自身もうつ病になりかけていた。就職先もなく、人生が行き止まりだった。

考えた挙げ句、上京することにした。それは逃げなのかもしれない。でも、どうせ逃げるなら「前に逃げた」ほうがいい。そう思って、ドレッドヘアを丸坊主にして、ヒッチハイクで東京に向かった。

上京するまでは、起業家や経営者に会って話を聞いていた。「金持ちは悪いやつだ」という先入観があったが、実際に会ってみると違った。

彼らは人のことを考え、世のため人のためにお金を使っていた。豊かな心を持っていて、この人だから成功しているんだ、と思わせる資質を持っていた。ぼくのなかで、お金持ちに対する偏見がなくなった。自分もこうなりたいと思った。

そんななかで、金融庁の人に会う機会があった。その人はぼくにこう言った。

「君は目が突き抜けてるね」

そして、ぼくの肩をたたいた。

「なにかしたい」

という欲求は、

「お金持ちになりたい」

という願望に変わっていた。どうしていいかわからなかったぼくは、とりあえず営業の会社に就職した。面接では、ヒッチハイクをした経験を評価してもらえた。家族から逃げるために行ったことが、役に立ったのだ。

就職をしたのはいいものの、お金がなかった。50円のクッピーラムネを買うかどうか迷ってたくらいだ。ダンスのパフォーマンスをして食事をおごってもらい、なんとかしのいでいた。住んでいたのは違法建築のアパートだった。

働いていた会社は、とても厳しい社風だった。業績が挙げられなければケリを入れられる。社内では毎日のように怒号が飛び交っていた。

「この会社にいればスキルは身につく。だけど、長くはいられない」

そう思ったぼくは、できる限り早く退職することにした。部長に昇進するときに進路を考え、仕事は辞めた。

一年間だったが、仕事に打ち込んだので営業スキルは身についていた。それを活かして、大手通信会社の営業を業務委託で始めることにした。

一ヶ月目でトップセールスになったぼくは、親会社の6割位の売上を一人で挙げていた。調子に乗ったぼくは金遣いが荒くなり、六本木で遊び回っていた。お金を好き勝手に使ってたら、取引先に裏切られ、親会社に不祥事の責任を押し付けられた。

「二度とこの業界で仕事ができないようにしてやる」

親会社の重役は、そう言ってぼくを切った。手配書のようなものが業界に出回り、どこにも雇ってもらえなくなった。社会的に抹殺されたのだ。

掲載日:2019年04月12日(金)

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株式会社LIM 代表取締役

土田真生(つちだ まさき)

拉致、親のうつ病、取引先の裏切り……。さまざまな困難に見舞われながらも、そのたびにリスクを取り、挑戦してきた。そんな土田さんの半生に迫ります。

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