櫻井允秀 Episode3:家族のような仲間のために。 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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地元にしか人脈のない僕が東京でいきなり成功するはずもなく、大コケしたことも一度や二度じゃない。
それでもがむしゃらにやってきた。
地元にいたころから慕ってくれていた後輩のひとりに、東京のでかいクラブでDJをやらせてやりたい。
もともとそんな気持ちもあって、東京でも学生や若者を対象にした音楽イベントを手掛けてきた。

22歳の時、「クラブ界のディズニーランド」と呼ばれる、若者の憧れの対象である施設でのイベントを成功させた。動員は5千人。
勢いに乗って次のイベントを打った。人づてに東京ドームを契約し、チームを組んでチケットを売りさばいていった。

その、契約してくれた人が、詐欺師だった。会場が取れているという前提で販売した何百、何千枚のチケット。
全体で5千万の借金を負った。背負いきれず飛んだ仲間もいたので、残った人間で割って僕は800万円。

負ったものは仕方ない。詐欺に気づかなかった僕の責任でもある。
返済のために、ほかのイベントを打ちながら、個人で投資もしながら、関わりのあった社長に何か仕事がないか尋ねた。
週3勤務で月25万という営業の仕事を紹介された。もちろん乗った。

自分で仕事もしながら、週3日だけそちらに通う。ダイヤモンドのパンフレットを送付する仕事だ。
仕事自体は単純作業。リストが渡されて、資料を袋詰めして送付するだけ。営業電話を掛けるわけでもない。
すぐに変だと感じた。客単価が高すぎるんだ。そもそもこれで月25万なんて。
社長に尋ねると、「だいじょうぶだよ、グレーだから」

その場で辞めると言ったものの、1ヶ月だけと引き止められた。
結局一銭も受け取らず、1ヶ月後、僕はその仕事を辞めた。受け取ったら、何かあった時にヤバいと感じたから。

それまで個人事業でやってきたイベントの仕事も含め、会社としてやっていこうと思った。
事務所を借りる際に、ちょうど借りてくれるという人が現れたので、その人を会長という形にして起業。
役員も社員も全員歳上なんだけど、全員僕を慕ってくれる。

年上の社員が僕の年齢に構わず敬意を示してくれるのに感動した。僕がその立場だったら、同じようにできるだろうか。
尊敬できる仲間と夢や目標に向かって一丸となって取り組む充実感にあふれていた。

だから、その時の決断にも迷いはなくて。

「社長! ヤバいっす! 」
社員のひとりが真っ青な顔で駆け込んで来た。
「落ち着け。何、どうしたんだ? 」
「会長……飛んだっす」

事務所を借りてくれた会長が詐欺師だった、と。
僕の事業以外は、会長の取ってくる案件で成り立っている経営だった。ただ、代表は僕。お金の作れるのも、僕。

「よし。会社やろう! 」
「は!? 」
「ここはたたんで、新しく会社やろう。給料25万でイイよな? 」
「い、イイけど、だいじょうぶっすか? 」

だいじょうぶかどうかじゃない。何とかする。
ここで僕が投げたら、こいつらが路頭に迷ってしまう。社員の生活まで責任を負うのが、社長というもの。
家族みたいに大切な仲間のために、自分の命を使おう。恩返しして生きると、手術をしたあの時に決めたんだから。
誰かを守るためにお金を稼ぎ使うと、元カノの死んだあの時に決めたんだから。

自分の稼いだお金とか所有物とかいう感覚が薄くて。とにかく誰かのために生きてきた。
自己犠牲でも何でもなくて、それが僕自身の喜びなんだ。
仲間が笑っていたらうれしい。仲間が悩んだり悲しんだりしていたら僕も苦しいから、いっしょになって真剣に考える。

だから、事務所に警察が来た時も、何ひとつ心当たりがなくて。

差し出されたのは、ダイヤモンドのパンフレットを送付する詐欺絡みの逮捕状だった。

掲載日:2018年12月05日(水)

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ACI PROMOTION株式会社 代表取締役社長

櫻井允秀(さくらい よしひで)

人一倍利他の姿勢で生きてきた櫻井さんの人生は、通常ではとても乗り越える道の見出せないような困難の連続でした。「何度転んでも起き上がれる」という、櫻井さんの自分自身への信頼感の根拠とは。

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