川田達紀 Episode4:人を繋ぐという才能 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

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音楽やりたいなんて夢は笑って馬鹿にされるMRの仕事。
普通に就職して生きてほしいと僕に願っていた、父さんをはじめとした家族。
そんな環境から移ってきた僕に、養成所という環境は最高だった。

誰も、夢を否定しない。
それどころか、右を向いても左を向いても夢を追う人ばかり。
「女優めざしてるの」「俺も歌やりたいんだよ」
うれしすぎた。うれしすぎて、片っ端から連絡先を交換した。
形だけの連絡先交換じゃなくて、ひとりひとりと仲良くなっていった。

女性不信はとうに克服していたから、男女問わず友達が増えた。
会社員経験があることもあって、どんな経歴の子にも偏見なく接していけた。
大切な仲間だから。いつかみたいな信用を失うような事は絶対にしない。真心から付き合う。

丁寧に付き合えば、ひとりひとりにかけがえのない輝きが見える。
大切な大切な仲間の、大切な大切な才能や想い。
みんなそれぞれの想いがあって、それぞれの夢を追っているんだ。

同時に、養成所外の付き合いも広げていった。
東京という、日本一人の集まる場所で、いろんな場所に足を運んだ。
芸能関係の人脈も増えたし、違った職種の人たちとも仲良くなった。

ただ、養成所の仲間たちは、必ずしも僕みたいな状況じゃない。
僕はMR時代に稼いでいたから、特にバイトすることもなく、貯金を崩しながら勉強したり人脈を広げたりしている。
だけど、ほとんどの仲間はそうじゃないんだ。

養成所から1時間も離れた郊外の安アパート暮らし。
近所のファミレスやコンビニで時給870円とかでめいっぱい働いても、稼げるのは月に13万とか……。
そして、270万の学費を毎月5万ずつ払っていく。メシなんか食えやしない。

そんなの、ひとりふたりじゃない。周りのほとんどがそうだった。
そして、実家に帰っていく……。それでなきゃ、夢を諦めてずるずるフリーターになる。
悲しいけど、詐欺に手を染める子もいた。

やっとつかんだ、夢をめざしたり応援し合ったりするのが当たり前の場所。
そこにいるかけがえのない仲間たちがどんどんいなくなっていくのがつらかった。
みんな、想いも才能もあるのに。こんなにいい奴らなのに……。
転校続きで友達と長く付き合えなかった子ども時代の寂しさも、あったのもしれない。

ファミレスでバイトしながら片道1時間掛けて通ってくる役者の男の子に、デザインの才能のあることを知った。
絵やデザインで仕事をしたことはないらしい。
「なら俺が仕事取ってくるよ。その前に、俺のロゴマーク作ってくれる? 」
1件3万円のデザイン料を払って、超クールなロゴマークを作ってもらった。
それを入れた名刺を配りまくる。元の人脈もあって、すぐに5人、10人から仕事を取ってきた。

彼はロゴマークやフライヤーデザインの仕事で生活できるようになった。
家賃6万、養成所の学費5万を毎月払っても、自主練や人脈作り、ファン作りといった、働く以外の事に時間が割けるように。
もちろん役者としてもどんどん伸びていった。
生活や心に余裕が出来れば、もともと持っていた輝きの種は花開けるようになるんだ。

養成所での僕のコースはシンガーソングライターコース。
基本をひと通り学んだら、作曲で仕事が取れるようになった。仲間のためにもたくさん作曲した。
僕が曲を書くと売れるとか、そんな事情もあって。
養成所には「もっと自分の事しなさい」と叱られるくらいだ。

僕は稼げるから、ほかの仲間たちを稼げるようにしたい。夢を諦めなくて済むように……。
仲間に仕事を取ってくるために、自分でイベントを企画するようになった。

ライブイベントは赤字になるからすぐにやらなくなったんだけど。テッパンは異業種交流会だ。
交流会に芸能事務所の人とかプロデューサー、会社の社長さんを呼んで、養成所の子たちと引き合わせる。
養成所の子たちは参加費無料、代わりにフライヤーを配ってもらったり、ミニ舞台を披露してもらったり。
そうして彼らを知ってもらう機会を作ると、彼らが仕事をもらうだけじゃなくて、一緒に会社をやったり結婚したりする人たちさえ出てきた。

ほかにも、個人的に紹介することもある。
「こういう子いないかな」「役者の子を大勢探してるんだ」
そんなふうに芸能事務所の人や影響力のある人に言われて、仲間を紹介する。
すると、めちゃくちゃ感謝されるんだ。

僕の大切な仲間が、僕の紹介で仕事をつかんで才能を発揮させていく。
こんなにうれしいコトって、あるだろうか。

しかも、紹介する社長さんたちにしばしばこう言われる。
「紹介してもらったあの子、ほんとにうちにピッタリだった! 」
「川田くんに紹介してもらうと、間違いないんだよ」
「人を紹介するって、目利きなんだよ。誰にでもできることじゃない」
どうやら僕には人繋ぎの才能があるらしい……。

大事な仲間が夢を諦めずに済んで、才能を輝かせていくきっかけを作ることが、僕の喜びであるだけでなく才能でもあるなんて。

2年で養成所を卒業した僕は、人材派遣業を本格的に仕事にすることにした。
僕も、周りの仲間たちも、笑って過ごせるように。誰も夢を諦めなくて済むように。

僕にも、前に出たい、舞台で音楽やりたいという気持ちはある。そして、できるとも思っている。
ただ、いまは彼らを支える仕事のほうが楽しい。
「自分を犠牲にして彼らを……」みたいな気持ちは皆無なんだ。

振り返ると、子どものころから世話焼きだった僕。友達に友達を紹介していた僕。人が大好きだった僕。
女性不信になったり、「大学出たら勤めるもんだ」「社会ってこんなもんだ」と思い込んだりしたこともあったけど。
自分を押さえ込まなきゃいけない環境から去ってみたら、僕の中にあった本質は変わっていなかった。
そして、今度こそその本質が、独りよがりじゃなくて誰かのためになる形で発揮されているんだと思う。

夢を追い掛ける仲間との出会いや、そんな若者を必要とする大人たちとの出会いが、僕自身の才能を発揮させてくれた。
僕が仲間の才能を発揮させる場を作るだけじゃなくて……ほかならぬ僕自身の才能を発揮させてもらっている。
人と人を繋ぐという、心からやりたい事をやりながら、感謝される日々だ。

だからあなたにも、夢を諦めないでほしい。
勇気を出して、人と出会う場に行ったり、心の内を話したりしてみてほしい。
あなたを助けてくれる人も、あなたを必要としてくれる人も、きっといるから。
人繋ぎや人を支えることを喜びとする僕みたいな人が、必ずいるから。

僕のKeyPageからあなたが勇気や希望を持ってくれたらうれしいな。

掲載日:2019年02月18日(月)

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人繋ぎ音楽プロデューサー

川田達紀(かわた たつき)

“人繋ぎ音楽プロデューサー”として芸能志望の若者を支援する川田達紀さん。実は女性不信やMRなど意外な過去、経歴も。昔から人が好きだった川田さんですが、現在のような生き方に至るには紆余曲折がありました。

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