藤澤恵太 Episode3:社会と芸術をつなげるーステージの外からつくる「おもしろいこと」 | KeyPage(キーページ):起業家の「人生を変えたキッカケ」を届けるメディア

» 藤澤恵太 Episode3:社会と芸術をつなげるーステージの外からつくる「おもしろいこと」

就活の時期に入って、テレビ局をいくつか受けたけど、いまいちしっくりこなかった。テレビでは自分のやりたいことができそうにない。 求人サイトを調べているうちに、ある会社に出会った。
「株式会社クリーク・アンド・リバー」
ここなら、僕のやりたいことができると思った。

「社会と芸術を繋げたい」
いつしか僕は、そんなことを考えていた。

お笑いや舞台でおもしろい人たちとたくさん出会ってきた。でも、活躍している人、自分の芸で食べていけている人は中々いなかった。

「あんなおもろいやつがなんでだめなんや」

それは、おもしろいやつが活躍できる環境がないからだ。

芸事はもうからない。自分のパフォーマンスをやるだけじゃ生活ができない。せっかく力があるのに、それを活かして生きていくことができない。
舞台は生活必需品じゃない。だからみんなが観るわけじゃない。舞台に興味がない人、舞台を観ないまま一生を終える人も多いだろう。
観る人が少ない。だから、おもしろいやつが活躍できる場所も少なくなる。
活躍できる場所が少ないから、稼げない。稼げないから、バイトに明け暮れて、本当にやりたいことができない。そうして、おもしろいやつは、どんどんやめていってしまう。

もっと、表現者の価値を上げれば。
もっと、芸術と社会が身近になれば。

ここなら、それができるかもしれない。

エントリーしたら、すんなりと入れた。僕が配属されたのはゲーム事業部。
とにかく仕事の進むスピードが速かった。1つの案件が終わったら、すぐに別のクライアントからの案件が来る。次から次へとコンテンツが作られていく。
まずは成果を出さないと。自分の目標にたどり着くため、目の前の仕事に打ち込んだ。経験を積みながら、毎年100万円はセミナーや学習費にあてた。
1年目で自分の成果が認められ、社内で賞をもらった。2年目で大手クライアントの担当に。3年目で新規チーム立ち上げ。4年目には会社史上最速でマネージャーとなり、九州支社を立ち上げた。

「舞台の人が活躍できる仕組みを作りたい。表現で食っていける仕組みを作りたい」

今なら、自分のやりたいことができる。そう信じて、僕はある提案を社長に直談判した。
1度だけでは聞き入れてもらえなかったから、毎朝社長にメールをしたり、社長室に直接行ったりして、自分の思いを伝えた。
そして、入社から5年目の2018年3月。僕は「舞台芸術事業部」を立ち上げた。
舞台芸術事業部のやることは大きく分けて3つある。

1つは、役者やマジシャン、そして落語家といったパフォーマーたちを、イベントやパーティに派遣すること。
1つは、パフォーマーたちにパフォーマンスの場を提供すること。
そしてもう1つは、パフォーマーの育成。

自分のパフォーマンスを見てもらいたい人。表現者たちのパフォーマンスを見たい人。この2つをつなげるのが僕の仕事だ。

僕は社会人パフォーマンス団体「シアター03」を立ち上げた。そこでは、未経験の人に落語をしてもらう。落語なんてやったことない、見たこともない人をイチから鍛えて、1カ月で寄席デビューしてもらう。
僕のもとで、20人以上の人が落語家デビューした。
彼らはみんな、月1で寄席に行くようになった。
芸をやる人は、勉強したり、感性を磨くために、必ず人の芸を観に行く。つまり、パフォーマーを増やせば、それだけお客さんも増えるということだ。
日本人がみんな舞台に出るようになれば、舞台に携わる人の収益は数十倍にはなると思う。そうすれば、おもしろいやつは自分のパフォーマンスで食っていける。

おもしろいことはステージの上じゃなくてもできるんだ。
僕のやりたいことが、ひとつ形になった。でもこれじゃまだ足りない。
僕は、「1番」になるんだから。

掲載日:2019年03月22日(金)

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(株)クリーク・アンド・リバー社 舞台芸術事業部 事業責任者

藤澤恵太(ふじさわ けいた)

株式会社クリーク・アンド・リバーで舞台芸術事業部のマネージャーを努める藤澤恵太さん。社会と舞台芸術の距離を縮めるために活躍する彼の原動力は、対人恐怖症の自分を救ってくれた舞台への感謝の気持ちでした。

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