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キッカケインタビュー

母を嫌い、死のうとまでした私が、娘を愛せる母親になるまで。

西村直子(にしむら なおこ)

スクールビジネスプランナー
起業女性サポート

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キッカケ記事

いま何やってるの?
現在は、子育てをしながらスクールビジネスプランナーとして活動中。PRやブランディング、プロデュースなど、伴走型の教室運営・営業サポートをしている。起業女性支援、子育て支援にも力を注いでいる。

生活苦から母が働きに出た――それがすべての始まりだった。
精神的に安定しない母、死ぬことよりも生きることの方が苦しかった学生時代。そんな私の悲しいidentityは、とある少女との出会いで崩壊した。

キッカケ①:母の変化

私は私立の幼稚園に通っていた。
父は建築関係で図面を書きながら現場監督をしていて、少しお嬢様気質な母はピアノの先生をしていた。
家はそれなりの中流家庭。
おんぼろの一軒家だったけど、畳の上に白いグランドピアノがあった。
母はそんな家庭環境に満足しているようだった。

父は建築系の仕事のため、飲んで仕事を取ってくることが多くなった。
まわりも職人気質の人が多く、飲み方が悪かったようで、軍歌を歌いながら帰って来た。
「おい!開けろー!」

本人はご機嫌な様子だが、大きな声をあげて帰って来ることも少なくなかった。
そして父は、「酒と借金」に溺れていった。

家計は立ち行かなくなり、私が小学生になった頃、母は働きに出るようになる。

これが、私の生き地獄の始まり。

お酒に逃げるように飲んだくれる父。
ストレスから自分をコントロール出来なくなり、壊れてゆく母。
その代償は家族に降りかかる。

自分のことで精一杯。
その上精神的に不安定な母は、私の寂しさや悲しみをフォローしてはくれなかった。
家にも学校にも、どこにも居場所がない。死ぬことよりも生きることの方が何倍も辛かった。
私の精神も、もう限界だった。

不安定な気持ちは、自然と私を非行に走らせた。
夜も帰らず、居場所を探してclubに行くようにもなった。
誰かに救ってほしくて、舌を噛み切って死のうとしたりした。

キッカケ②:お金がないという呪縛

高校生になり働ける年齢になったら、すぐに働こうと決めていた。
「うちはお金がないから貧しいんだ。だから混乱している」
お金さえあれば前のような家族に戻れる……かもしれない。
たとえどんな人でも、私の母親はお母さんしかいない。
もうお金のことで苦労させたくない。お母さんに笑顔でいてほしい。

私は、ずっと心の片隅で母の愛を求めていた。
お小遣いも絶対もらわない。自分で稼いで見せる。

まだ冬の気配の残る15歳の3月。
商店街のアルバイト募集の張り紙のあるところすべてに頭を下げて回った。
「お願いします。ここで働かせてください。来月高校生になりますから!」

最後の店を出て、帰路につく。
もうすぐ桜の咲く季節なのに、すごく寒く感じた。
座っている自転車のサドルはあったかい。冷え切った心との温度差に、私の体はついてゆけてないようだった。

――どの店もダメだった。
できればいっぱい泣きたいのだけど、泣けなかった。心と体がなかなかリンクしなくて、それがますます辛い。
「どうしよう」

家を出る勇気もなくて、あそこに帰るしかなくて、なんとか雇ってくれるところを探したら、パン屋さんが雇ってくれた。

パン屋さんでの仕事は私にとって好機だった。

「あら、今日もこんなにあるん?」
廃棄のパンを持って帰ると、母は喜んでくれた。
その瞬間だけは少しだけ、生きている心地がした。

キッカケ③:母子関係の呪縛からの卒業。海外ボランティアで目にしたもの

高校から、大学へ進学した。
アルバイトをしてお金を貯めて学費を稼いだ。
私は足りない愛情を探し求めるように、夜の仕事にのめりこんだ。

「私は誰かに必要とされている」

相手がたとえ、見ず知らずの他人だったとしても。
夜の仕事は、人に認めてもらえる感覚を私に教えてくれた。
「新しい自分になりたい!」
とやっと思えたのは19歳の頃。
本当の貧しさとは何かを知りたくて、仕事で貯めたお金で国際ボランティアに出た。

フィリピン・マニラへ渡り、スモーキーマウンテンに登ってボランティアをした。
マニラの竪穴式住居のような集落を訪れた時のこと。
そこはどぶ川の上に住んでいるような、貧しい地域だった。
集落を歩いていると、2歳くらいと6歳くらいの姉妹が、暑い中濁った泥水の中でキャッキャキャッキャと楽しそうに遊んでいる姿を見つけた。

私は、彼女たちをしばらく茫然と見つめたあと、急に胸が苦しくなった。

急いで木陰に隠れ、座り込む。
そして嗚咽するほど泣いた。

「『貧しさ』って一体何……?」

この環境で暮らしているこの子たちを、一体誰が不幸って決めるんだろう。
「こんなにかわいらしい子が、あどけない笑顔で精一杯生きている」

金銭的に裕福な国であるはずの日本に生まれた母は、お金の話しかしなかったのに。

「心は母のほうが貧しいんじゃないか」

自分が今まで母から言われたいろんな言葉が脳裏をよぎる。
「もしかしたら、親も間違えるということがあるのかもしれない……」

必死にしがみついていたもの、母との確執、恨み、お金への価値観、全て。
これまで築いてきたアイデンティティが、全て崩れてゆく音がした。

これが私の魂の生まれ変わった瞬間。
「これからは、私が見たものと、私が信じたものしか信じない」

そして『自分を育て直す』『自己肯定感を育む』という概念が出来た。

私はこれまで感じていた生き地獄から、人生を切り拓く決意をした。

キッカケ④:自分を育て直す経験

それから長い時間をかけて、カラッポだった自己肯定感を養っていった。
私に足りないものは苦労しながらも経験のなかで少しずつ積み重ねていった。

恋人という存在ができて、人に認められる経験をして。
就職して、仕事を通して真っ当に誰かに必要とされる経験をして。
自分の経験を人に話すことで、自分自身を受け止め直す。
どれも一筋縄ではいかなくて苦しい時もあったけど、
少しずつ少しずつ、自分を許し認めてあげる行動をとる。
そして、勇気を出して、これまでの私を育てた父と母に、辛かった頃の話を本気で伝えることもした。

それは、ある日、呑んだくれて帰ってきた父と母が朝方まで喧嘩をしていて、仲裁に入った時。
……もう我慢の限界。
母と喧嘩する父を見ていて、無性に腹が立ってきた。

「もうさ……謝れ!謝れー!」
堰を切ったように叫ぶ。

「どれだけ偉そうに、お母さんに何言われてもな、一生頭上げたらあかんよ!
お母さんが働いたからここまでなんとか生きてこられたんや!
それやのに、ここまで人に迷惑かける筋合いあるか!」

今まで精神的におかしくなる程母を苦しめた父に、私は怒り、本音をぶつけた。

豆鉄砲をくらったような母の顔。
(あんた、私の味方でいてくれるの……?)
そんな目つきでこちらを見ていた。

お母さんも生きるのに、ただただ必死だったのかもしれんね……。
そう思えてきて、私は母を抱きしめた。

一度、お母さんを受け止めてあげよう。そしたら、私のこと、受け止めてくれるかな……。

その後、母にもこれまでの全ての感情、経験を話した。
悲しみも苦しみも、寂しさも。
(私の記憶、気持ち。嫌でも全部受け止めてみろ!)
そんなやけな気持ちも半分。
でもそれで良かったみたい。

私の心の確執はみるみるほどけていった。

「やっとお母さんをつかまえた気がする」

母を許せた瞬間だった。

キッカケ⑤:母になり、伝えたいこと

私は、結婚して母親になった。

赤ちゃんに無条件に必要とされること
本当に小さな手で力強く指をにぎられること
まっすぐな目で見つめられること
無垢な笑顔で笑いかけられること

母親としての全ての経験が私を次々満たしてくれる。

今、私は一番しあわせ。

自己肯定感は、人間が生きてゆくには必要不可欠なもの。

それを培い、自分を育て直してゆくには、小さな成功体験を積み重ねてゆくこと。それしかない。

例えば、転職し、挫折し苦労しながらも、最終的には「営業」という職で社内のMVPをもらえるまでになった経験。

人との繋がり方を知り身につけることの出来たあの経験は、私の大きな糧となっている。

「死んでもいいよ、逃げてもいいよ。」
15歳の時の私に、今、かける言葉があるとしたら。

「生きている価値がない」と吐き戻しを続けて、舌を噛み切って死のうとした夜。
死ねなくて三途の川を見た。
学校を自分で選ぶこともできず、先生が異変に気づいてくれるわけでもなく、
帰る家が他にあるわけでもない世界は、本当に生き地獄だった。
だから、死ぬことがそんなに悪いことだとは思わない。
でも、自分の命と取り替えてでも生きてほしいと願う我が子の生まれた今、
あの時、生き直すことを選ばせてもらえたことは奇跡だと思う。

この私の経験を、今、目の前の子育てに途方に来れているお母さんたち、
そして、まさに死にたいと思っている中学生・高校生たちと
「死ぬ」ということについて一緒に考えてゆける機会を作りたいと思っている。
自分の魂は、自分の力で育て直せるから。

これが私のKey Page。

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掲載日:2017年08月25日(金)

鍵人No.0066

西村直子(にしむら なおこ)

人材派遣会社、(株)リクルートケイコとマナブを経て、退職後はNPO子育て学協会にて、幼児教育全般に取り組む。産後は営業企画の委託、ライター業、起業ママ支援、お教室のビジネスサポートと、多岐にわたって活動中。
『働くママが、もっと楽に、楽しく!』西村直子ブログ
https://ameblo.jp/naowanko77/

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